2015年09月06日

英雄の凱歌の路地裏で その3(途中)

サンジェント遺跡のネタバレを含むので、終わっていない方はご遠慮ください。

以下、追記

イルファーロ郊外。

――ギイッ…。

鉄の格子の扉を開き、その領域に入る。

「………。」

色のない世界。
冬の曇天を映したような、鈍い墓石(ぼいし)の配列。

ここは、生者が死を祀る場所だ。

「………。」
無言で半歩下がってギドに続くカーラルデの手には、途中で積んだ供花(きょうか)。

その鮮やかな色がひどくこの場に不釣合いだなっと、ギドは思いながら、

――いや

斬られた花はやがて枯れるか――。

そこまで考えて、心の中で首を振る。

――トンッ。

背中に軽い衝撃を受けて、驚いたようにギドは振り返る。

「…あなたが悔やむことではないのよ。」

振り返った先には、無表情に彼を見上げるカーラルデ。

「…ああ。」

亀裂の入った心に優しさが沁みる。

「ありがとう。」

視線を前に戻し、歩く。

目的の墓は、墓所の奥まったところにあった。

――ロイス・J・ガーランド

カルコサスの婚約者だった聖騎士の墓だ。

もっとも、その墓石の中に彼の朽ちた肉体はない。

ロストした者の体は、そのソウルと共にこの世から完全に消えてしまうのだ。

「………。」
つまり、この墓は記号でしかない。

だが、

「よく、手入れされているわね。」
「ああ。」

墓はきれいに掃除され、少し古いが花も飾られている。

――例え、この墓石が記号でしかなくても、

「ロイス」という人物とつながりたいと思う者には、必要なものなのだ。

「…カルコサス司祭が来ていたのかしら。」
「いや…、この『墓』に向き合えていれば、彼女が狂気にかられることはなかったんじゃないかな。」
「そうね…。」

「…おそらくは、手入れをしていたのは、『彼』だと思うよ。」
「えっ?」

ギドの視線が移るのにつられて、カーラルデも後ろを振り返る。

その先には、イルファーロの騎士と、騎士に肩を借りながら歩く松葉杖の青年の姿がある。

「あれは、エイジャン…?」

エイジャン・J・ガーランド。

ロイスの弟である。
posted by レクタード@wiz at 21:26| 千葉 🌁| Comment(0) | 長編(未完・放置) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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