2015年01月18日

迷宮ディナー

なんかダンジョン飯が話題なので、見切り発車で書いてみました

以下、追記。

「あー、にいちゃんにいちゃん。ちょうどええとこに来たなー。」
「はい?」
イルファーロの門をくぐって、すぐの通り。
アクセスの良さから多くの冒険者に愛用される雑貨屋の前で、その店主に俺は呼び止められる。

「なんですか?ドンキーさん。生憎、今は売りに出すようなものはありませんよ。」
「やっー、ちゃうねん。」
自分のはげ頭をつるっとなでながら、ドワーフらしからぬ愛嬌のある丸い目を向けてくる。

「実はなー、にいちゃん達に頼むたいことがあるんよー。」
そんなことを言いながら、きれいに装丁された一冊の本をもってくる。

「これや、これ。」
「本・・・?」

その表紙には、調理道具をもった冒険者が描かれており、
題名は…

「『迷宮ディナー』?なんですか、これ。」
「なんやにいちゃん知らんのか!遅れとるなー。」

ドンキーさんの話によると、冒険者である主人公が金欠を補うためにダンジョンのモンスターをおいしくいただいてしまう話らしい。

「なかなかその描写がうまそうでなあ…、っておい!どこいくんや!」
「そんなのは冒険に出たことのない奴の創作です。取ってこいとか言われてもお断りですよ。」

ひらひらと手を翻して、俺は雑貨屋を通り過ぎる。

「ちょっとお待ちなさい、クラン。」
そんな俺に、白いしなやかな手が静止をかける。

「なんだよアロ姉。」
俺は振り向くと、その人物に目を向ける。

すらっとした長身。
黒に金糸をあしらった華美なアバターに身を包み、
その端正な顔半分を、検のある仮面で覆っている。

現在パーティーを組んでいる女エルフ。
名前をアロフォネス、通称はアロという。

「わたくし。その創作物にはこれっぽちも興味はございませんが、そういう創作物が勝手に一人歩きしてしまうことを憂れいておりますわ。」
「…どういうことだ?」

「このドンキーさんのように、モンスターはおいしいもの、バジリスクは珍味。ドラゴンは大味だが調理次第で化けるとか、そういう不確かな情報に好奇心を刺激され、モンスターを食してみたいなどと思う人が増えてしまうのは、けっしてよいことではないと思っておりますの。」
「ふむ…。」

興味ないと言いながらこいつ絶対読んでるな、っと思いながら俺は軽い相槌を打つ。

「そもそもその本に出てくるバジリスクだのドラゴンだの大サソリなどは、イルファーロ近辺には生息しておりませんわ。ですからわたくし達が正しい調査を行い、それを広く民衆の皆様に周知させて余計な好奇をもたないようにたしなめることが必要なのではないかしら。」
「………。」

言っていることは立派な気もする。
だが、この顕示欲の強いお嬢様が『こういう』ことを言うときは、必ず何かがある。

いったい…、なにが。

「えーと…」
その答えを求めて、俺は別のパーティーメンバーに目を向ける。

丸みを帯びた女性らしい肢体。
白に金糸をあしらった清純なアバターに身を包み、
その端正な顔半分には、これ以上透徹しようのない理知的な瞳が輝いている。

現在パーティーを組んでいるハーフノーム。
名前をアライアンス、通称はアリアという。

「その本は私も読みましたが…」
俺の意を察したのか、アリアが口を開く。

「物語に出てくるエルフ魔術師が、大層愛らしいのですよね。」

ビクビクッ。

音が出そうな動揺の色を、アロ姉が浮かべている。

「有名なポークルさらいがモデルではないかと言われていますが、事実かどうかはわかりません。でももしそれが事実なら、こういう出版物に出られるということは、とても名誉なことと存じ上げます。」

ビビクッ。

「そ、そんな俗な本にでっ、出ても。なにも名誉なことなどございませんわよ、アリュア。」
「私は姉さまが出演されることに反対はしませんよ?」
「ばっ、ばかなことをおっしゃい。わたくしはですね…」

「………………。」

そこにもう一人のパーティーメンバーが、

ビッ!

無言で親指を立てる。

ずんぐりとした樽のような体。
地味な色の民族衣装に身を包み、
その『いわお』のような顔全体を、生きた年輪の如きしわが覆っている。

現在パーティーを組んでいる老ドワーフ。
名前をスティル、通称はエルダーという。

「ほらっ、エルダーも同意されていらっしゃいますよ。」

ちなみにこの爺さんはめんどくさいのかなんなのかほとんど喋らず、その通訳はもっぱらアリアが担当している。

「ほうほう。」
話をきいていたドンキーが、いい笑顔をこちらに向けてくる。

「わいの依頼を受けてくれるんなら、いい『書き手』、紹介できるでー。」

「あー、うー…。」
首まで真っ赤にしてアロ姉がなにやら呻いているが、それでも逃げ出したりしないところを見ると、よほど本に出てみたいらしい。

「……喰った結果、あんたがポックリ死んでも俺らは知りませんよ?」
俺の言葉に、

「ほほっ。…守護者の血を引いた毒見役を雇う予定や。」
「こわっ!」
きっと、マージェとソルグランあたりが犠牲になるのか…。

「じゃ、依頼はにいちゃん達指定でドルクに回しとくでー。冒険者ギルド通さんと、後がいろいろこわいしなー。」

――こうして。
俺たちのダンジョン0円生活は、始まったのだった。



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posted by レクタード@wiz at 20:01| 千葉 ☀| Comment(0) | 迷宮ディナー(未完) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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