2013年11月13日

第一章 第十項

長編ダイジェスト版 1章 その11

前回のあらすじ:
DEAD END!

続きは追記で


彼が取ったのは、第三の選択肢だった。

「…………。」
「…………。」

戦場に、言葉はない。

カインの爪が空を切る音と、レクタードの槍がカインの肌に突きはじかれる音。
それだけだ。

レクタードは、
カインを倒そうとしている。

逃げてポールに辿り着くのは、彼には不可能だ。

ゆえに、祭儀場を封鎖していると思われるこの闇天使を倒して、女神像の呪いを解くしか、彼には選択肢がなかった。

「…………。」
正直にいえば、勝算はない。

もう『奥の手』は使ってしまった。

ゆえに、彼にできるのは、彼にできることだけだった。

カンっ。
槍が、はじかれる音。

避け、叩く。

――ハリセン程度の一撃を、ただ、繰り返す。

終わりが見えているわけではない。

勝てると思っているわけでも、
負けると決めつけているわけでもない。

――ただ、繰り返す。

なぜと問われれば、彼はこう答える。

「それしか、ないから。」

――そんなことはない。
彼には逃げるという選択肢があるのだから。


ズブっしゅ!


「………ぬう。」
レクタードの槍が、カインの肉に到達する。

よく見れば、カインの体のそこかしこの肌がひび割れ、刺し、傷つけられている。

「ナンダ…、コイツハ…。」
わからない。

いきなり訳の分からない光で、カインの右足を消し飛ばした。

消し飛ばされた足は、本来なら闇天使である彼の再生能力をもってすれば、数秒で回復するはずなのに、
その傷口は、完全に壊死(えし)していた。

ゆえに、カインは自らの腕をちぎり、足としたのだ。

――その時は、『怒り』がカインの頭を占めていた。

そして追いつき、対峙した人間は恐ろしく貧弱だった。

飛び、まといつく蚊のように、
痒みを覚える程度の一撃を繰り返す。

繰り返す

繰り返す、繰り返す

繰り返す、繰り返す、繰り返す

繰り返す、繰り返す、繰り返す、繰り返す、繰り返す、繰り返す、

繰り返、繰り返、繰り返、繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返
繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返
繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返繰返

――いつの間にか、カインの体中に痒みは広がっていた。

やがて、その痒みが、明確な痛みとなって広がっていく。


ぶッシュ…


カインの体液が、落ちる。


「…………。」
ありえないことに、カインは生まれて初めて、

『怖イ!怖イ!怖イ!』
『人間』に、恐怖を覚えていた。


想像するといい。

決してつぶせず、
決して離れない『蚊』に、
身が干からびるまで血を吸われる自分を。

「うアアアアア!!」
当たらない爪を、振るう。

カインが恐れれば恐れるほど、蚊は猛威を振るう。

だが、

パキィ……

蚊の針である、槍がその酷使に耐えきれず、折れる。

『ヨシ!』

だがすぐに蚊は、次の武器、片手剣を腰から抜き、向かってくる。

「イケヨオオ!アッチニイケヨオオ!」

当たらない。

痒い。

痛い。

――これが、『生き地獄』なのだと。
カインは、知った。



*********************************



同時刻。
祭儀場、入口。

「お―っ。シルフから聞いた通り、見事に埋まってるねえ。」
黒衣のエルフファイターが、感心の声を上げる。

入口は崩落し、中に入ることができない。

「…これは、一種の結界ですわね。根暗が好きそうな、たちの悪いできですわ。」
妖艶な仮面をつけたエルフメイジが言う。

「そうなると、わしの出番じゃなあ!」
小柄なドワーフが、ドヤ顔で前にでてくる。

その手には、白い、金属のカケラが握られている。

「ゆくぞ!わが秘法!ハルモニアの…」

あらゆる魔法を無効化する、ハルモニアの欠片を、崩落した入口に突き立てた。



**********************************



なんでも、終わりはあっけないものだ。

「………ガッ!」

片手剣が折れた。

そのタイミングで、足元の体液に足をすべらせてしまったのだ。

そこに、カインの破れかぶれの麻痺の爪が当たった。

「…………。」
毒が回り、レクタードの動きが止まる。


「ひャ…」

「ヒャハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

カインの、その瞬間の喜びがどれほどのものだったか。

やっと、この地獄が終わる。
やっと、この蚊をつぶせる。

歓喜と共に、カインはダブルアローの詠唱に入る。


「…………っつ。」

何人も見てきた。

彼よりずっと優秀で、憧れた者たちがそうであったように、
終わりはあっけない。

そして彼も、いつかこうなることを、受け入れていた。


だから、

ありがたいと思う。


「…つおおおお!」
今日の彼には、死ねない理由が、あったから。

――ああ、言えなかったけどさ。

うれしかったんだ。
爺さん、あんたに誘われたのが。

だからさ、
1秒だけ、
早く、
動けた。

カインの詠唱が、完了する。

近距離のダブルアローを、回避するすべはない。
彼の装備では、一撃で消し炭だ。


ならば、防ぐのみ。


「ここは…」
左手の盾を振り上げる。

「俺に任せて…」
その盾が一瞬で、紫色に変わる。

「シネエエえええええ!!」
「先にいけええええ!!」

ダブルアローの一段目が放たれたのと、
レクタードが盾を投げつけたのが同時。

アローが、盾に着弾し、


――爆発する。


「ナア!」
起こった爆発に怯み、カインの二段目のアローがわずかに外れる。

レクタードは、爆発の余波に耐えきれず、吹っ飛ぶ。

「ぐう―――!」
足を踏ん張って耐えようとして、気づく。

もう、自分の体が限界に達してしまっていることに。

『ゾーン』

いわゆる極限の集中で、疲労を無視して動いていた彼の体は、一度それから抜けてしまった為に、
立ち上がることもできなくなっていた。

「………。」
最後の武器、腰のダガーを引き抜く。

幸い、『奥の手』のCTは終わっている。

「駄目もと…だな。」

体の、気力(オド)を確認する。

彼には、
彼に言わせれば皮肉な話、
普通の『この世界』の住民の、数倍のオドが内包されている。

だが、『クラス』のない彼には、それを使う『スキル』がない。

ゆえに彼は、我流で『スキル』を開発しようとしたが、恐ろしいことが分かった。

彼がオドを流した物体は、拒否反応を起こし、暴発するのだ。


「ガイアが…」
だから、

「もっと輝けと」
彼はそれを、

「お前に囁いている」
武器にした。


ありったけのオドを、ダガーに流す。
ダガーが紫色のオーラに染まり、火花を散らす。



「くらえ、エクス(約束されし)…」



――かつて、子供の頃。

TVゲームで、こんな武器があった。

攻撃力は最低。
でも、『投げれば』、使い捨ての一回なら、最強となる武器。

彼はその名を、この『スキル』につけた。
それは、特別でないものが、特別になる為の代価。

武器を、その『存在』を暴発させ、一発の『弾丸』に変える。




「カリパーーーーーーアア!(自滅の剣)」




一瞬の光。

紫色の一条の輝きが、光の速さで飛ぶ。


「ブオっ!」
あやまたず、光がカインの央(おう)を貫く。




「―――――。」
「―――――。」




だが、それだけだ。


「フ、フハッハハッハア!」
カインが、腹に穴をあけたまま、笑う。

「耐えキッタゾ、ニンゲン!」

「………やっぱ、無理か。」

『エクスカリパー』の威力は、その武器の『鍛錬値』、『レア度』、『SR』に比例する。
光ってもいない短剣では、その威力は大幅に減少するのだ。


『これで、終わりです。』
誰かが、そういった気がした。

「いよいよもって、そのと…」



「………。」
「………。」



レクタードとカインの間に、どこかで見たような背中が立つ。

「じい…さん?」
「………(よくやったな)。」
無言で、その背中、スティルが親指を立てる。

「ナ、ンダ、お前ハ?」


歌うような、美しい詠唱が響く。


MA TO (広域の・風)
TIL BA AL AL AL MAN (速やかな・逆の・倍の・倍の・倍の・変異) 


風が、カインの体に開いた穴に集まる。

「ナニ!」


TO IT (風よ 解き放たれ) 
PIC FIS (空間ごと 死に絶やせ!)


「ウインド、バースト!」

アリアの放った『かまいたち』の刃が、傷ついたカインの全身を切り刻む。


「アっ、アアアア…。」
闇天使の目から、光が失われていく。

「アデル…。スマナイ…、ワレもソチラに…」

その巨体がくずれ、
落ちた。



******************************************************

使ったパロディネタ:

アベルとカイン               … 聖書
シノとアリア                … 生徒会役員共
エクスカリバー(約束されし勝利の剣)    … Fate
エクスカリパー(『ば』じゃなくて、『ぱ』)  … FF5
ガイアが俺にもっと輝けと囁いている     … どっかのモデルさん
posted by レクタード@wiz at 22:11| 千葉 ☀| Comment(3) | 長編(未完・放置) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント

* レクタード先生の次回作にご期待下さい! *


怒涛のクライマックス…!
改めて一から読み直してみたら結構長編だった!
お疲れ様であります!

そしてやっぱりドワーフはイケメンだった。
Posted by クトネ at 2013年11月14日 00:39
決めたボククランと結婚する。

赤目の悲惨な結末キボンヌ!!
Posted by Ev○ at 2013年11月14日 02:42
やはり時代はドワーフだな!
スティルが格好良すぎて惚れてまうがな!

次回作に期待しています!!
Posted by カリーム at 2013年11月15日 08:42
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