2013年11月13日

第一章 第九項

長編ダイジェスト版 1章 その10

前回のあらすじ:
赤目ちゃん、つお〜い^^

続きは追記で

――クラスシステム。

それは、よくできた祝福(ブレス)と呪縛(ギアス)によって成り立っている。

たとえば、「ファイター」というクラスについたものは、
これまで取得したスキル、本来もっている魔術などの可能性を犠牲にすることで、
一定の経験で『必ず』スキルを取得できるようになる。

バッシュ、シーフポーション、ウインドアロー。

何を取得するかを、完全に後天的に選べる為、
このシステムを使わない冒険者はほぼまず、いない。

99%いない。

いるとしたらそれは、

異世界より召喚され、
祝福も呪縛も受けられなかった、
黒衣の中年バツイチ男くらいのものだ。

そう。

彼には、クラスがないのだ。
ゆえに、物理防御力向上も、ブレイブスタイルも、むろんハードブロウも、ない。


「――――。」
彼――レクタード=クランが、祭儀場のあかちゃけた石畳を駆けている。

追手は、視認できる距離にはいない。

だが、祭儀場全体を揺らすような地揺れが、その存在が失われていないことを示している。

「ったく、どこまで逃げたんだあいつら…。」
『奥の手』を使って、時間とそれ相当のダメージは与えた。

彼女らと合流さえできれば、勝機がないわけではな……


「………。」
むわっとする血の匂いに、レクタードは顔をしかめる。

「………。」
「にゃー、もう来ちゃったの^^?」

その廊下には、赤いものしかなかった。

そのうち息をしているものは、アリアの白い首筋に双刃を突き立てた、赤目一人。

「………。」

――殺すか?

冷たい殺意が、レクタードの目からこぼれる。

「にゃー、こわいい。」
そんなことを言いながら、バックステップで離脱していく赤目。

「なんだかよくわからないおじさんと、殺(や)る気はないのよね。」

「………。」

「それに、」

「WHOOOOOOOOOUUUUU!」
地揺れの主が、視認の域に入る。

「おじさんには、お客さんみたいだしね^^」

「ニガサンゾオオ!!ムシケラブゼイガアアアアアアア!!!!」

地揺れの主、カインが追ってくる。

奇妙なのは、彼の四本の腕の二本がちぎれ、『右足』につけられている。

では、本来の彼の『右足』はどこにいったのか――。

「………………。」
赤目の気配が消える。

「………………。」
レクタードの肩から力が抜け、

ギュっと、

その目が何かに耐えるように、しぼまれる。

「…やれやれ。」
そしてゆっくり目を開き、手に持った槍を構える。

「ひどい話だぜ。…ほんと。」

目の前には闇天使。

その鉤爪が、振り下ろされた。





*******************************************************





幽界。


「………。」
「………。」
「………。」

そこに、5体の肉体を失ったソウルが立っている。

「終わり…ですね。」
ノームが、ほっとしたようにつぶやく。

「まだあの、黒頭巾がいるじゃないか!」
男ポークルが悲鳴をあげる。

「あの方は、守護者の血を引いていらっしゃいません。なので死んでも、ここには。」
「………。」
「………。」

「それにもし、逃げ延びていても、変わりはないでしょう。」

一人となった彼の、もっとも生存率が高い選択は、このダンジョンで身を隠して救援を待つことだ。

一か八かで死体を抱えて、巨大な闇天使と幾多のMOBを潜り抜けてポールに辿り着こうというのは、ただでさえステルスのない彼にとって、自殺行為だ。


「…彼が…、仲間を見殺しにするっていうの?」

「…あの方と知り合ったのは、ほんの1週間前ですから。」
「………。」


他人だ。


「ですので、これで、終わりです。」

「………。」
「………。」

「………ひっく…。」
女ポークルが、幽体のまま、泣いている。

「………。」
その頭を、ドワーフが優しく撫でながら、

「……死ぬなよ。」
ぼそりっと、つぶやくのであった。

posted by レクタード@wiz at 19:45| 千葉 ☀| Comment(0) | 長編(未完・放置) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。